コラム

アカデミー賞でのウィル・スミス氏の行動は捜査対象となるか

2022年3月27日、アメリカの第94回アカデミー賞授賞式で、俳優ウィル・スミスさんが妻をネタにしたジョークを飛ばしたコメディアン、クリス・ロックさんを平手打ちにするという出来事がありました(ウィル・スミス、米アカデミー賞授賞式の最中に妻を侮辱したプレゼンターを強烈ビンタ」2022.3.28報知新聞社)。

ウィル・スミスさんの妻は、脱毛症を患い、丸刈りにしていたということで、ウィル・スミスさんとしてはそんな妻のことをネタにされたことが許せなかったようです。

ウィル・スミスさんの行動には、賛否があるかと思います。

ですが、これだけ大衆の面前で平手打ちをしてしまったのですから、ウィル・スミスさんは、「逮捕されるのではないか?」「何か刑事罰を受けるのでは?」ということが気になった方もいたのではないでしょうか。

私は、日本の弁護士であり、アメリカの法制度は分かりませんので、「もしこの出来事が日本で起きたらどうなるか?」という観点から解説をしてみたいと思います。

まず、ウィル・スミスさんの行動は、暴行罪(刑法208条)又は傷害罪(刑法204条)に該当します。クリス・ロックさんが怪我をしていれば傷害罪ですし、怪我をしていなければ暴行罪です。

では、ウィル・スミスさんは何かしらの刑事罰を受けることになるのでは、と思われるかもしれませんが、そうではありません。実際にウィル・スミスさんが刑事罰を受けることになるためには、警察が捜査をし、検察官が起訴をする必要があります。

警察が捜査を開始するのは様々な場合がありますが、一つの大きなきっかけとなるのは、「被害届」が出されることです。重大事件でない限り、被害者が被害届を出さない以上、警察が捜査を開始しないことがほとんどです。

今回、クリス・ロックさんは被害届を出していないという報道がありました。そのため、この事件が日本で起こったとしても、被害届が出されていない以上、警察が捜査を開始せず、ウィル・スミスさんが逮捕されたり、刑事罰を受けたりすることはない、となる可能性が高いと言えます。

ただ、ここは誤解されている方も多いのですが、被害届が出されない限り、常に警察は捜査を開始しないという訳ではありません。被害届というのは、警察が捜査を開始するきっかけの一つに過ぎませんので、被害届がなくても警察が捜査を開始することはあり得ます。これだけ話題を呼んだ暴行事件ですので、警察の判断によっては、捜査が開始される可能性は十分にあります。

しかし、その場合でも、被害者の処罰意思が強くないことは考慮されますので、ウィル・スミスさんが実際に刑事罰を科される可能性は低いと言えそうです。

以上、ウィル・スミスさんの事件が日本で起こった場合にどうなるかということを解説してきました。

結論としては、①被害届が出されていない以上、警察が捜査を開始する可能性は低い。②被害届が出されていなくても警察が捜査を開始することはあり得るが、その場合でも、刑事罰を科される可能性は低い、ということになると思います。

ウィル・スミスさんの気持ちも分かる気がしますが、警察のお世話になる可能性がある行動は慎んでほしいですね。
アメリカのニュースではありますが、刑罰に該当するかどうかと、実際に処罰をされるかどうかはまた別の問題であるということがよく分かるニュースだと思いますので、ご紹介させていただきました。