コラム

鹿児島の勾留請求却下率

刑事事件で逮捕された容疑者の勾留請求について、全国の裁判所が必要性を認めず却下した件数が2018年に6000件を突破し、過去50年で最多となったことが最高裁への取材で明らかになった。却下率(検察の請求件数に対する却下件数の割合)も初めて5%を超え、5.89%に上った。

   by 毎日新聞4月20日

少し古い記事ですが,2018年の勾留請求却下数が6000件を超え,却下率も5.89%に達したようです。

鹿児島の却下率はどうなのか気になったので,調べてみました。

2018年の統計はまだ発表されていないため,2017年の数字となります。

2017年『検察統計年報』「最高検,高検及び地検管内別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員」によると,勾留請求数に占める却下数は以下の通りになっています。

全国  勾留請求数 101,258 勾留却下数 3,901 勾留請求却下率 3.85%
鹿児島 勾留請求数         710 勾留却下数      17  勾留請求却下率 2.39%
東京  勾留請求数    17,585 勾留却下数1,679  勾留請求却下率 9.54%

まず,統計を見ると,2017年から2018年にかけて,全国的に勾留請求却下率が3.85%→5.89%と大幅に伸びたということが分かります。

2017年の比較ということになりますが,鹿児島の勾留請求却下率は2.39%で全国平均を1.46%も下回っています。
一方,東京では,勾留請求却下率は9.54%にも及んでおり,その差は歴然です。
東京等大都市部では,勾留請求却下になりやすい痴漢事件が多いことを差し引いても,その差はあまりにも大きいといえるでしょう。

そもそも勾留は,①被疑者が定まった住所を有しないとき,②被疑者が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき,③被疑者が逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときという厳格な要件を満たす時にのみ認められます。

そして,判例上,罪証を隠滅すると「疑うに足りる相当な理由」とは,単なる抽象的な可能性では足りず,罪証を隠滅することが何らかの具体的事実によって蓋然性が推測される場合でなければならないとされています(大阪地決昭38.4.27下刑集5-3-4,p.444等)。

しかしながら,今までの裁判所は,検察官の主張する抽象的な可能性で,罪証隠滅,逃亡の要件を認めてきていました。近年の勾留請求却下率の伸びは,そのような誤った運用が次第に是正されてきているものとして,評価できるものだと思います。

鹿児島県弁護士会刑事弁護委員会としても,勾留準抗告運動等でこの点の是正を求めていくようです。

私個人としても,刑事事件を受任した際には,この記事でも引用した勾留請求却下率に関する統計等を用いて,勾留請求却下及び準抗告認容を求める活動をしていきたいと思います。